【旅の記録】「印象・日の出」が描かれた世界遺産のフランスの街の話

ル・アーブルの街並み 旅行

「印象・日の出」はクロード・モネが1872年に描いた。

印象派という言葉はここから生まれたという重要な作品。

ドガ、ルノワール、シスレー、セザンヌなど印象派の巨匠たちの名前は誰もが聞いたことがあるだろう。そして、その絵はもしかしたら自宅にジグソーパズルとして飾られているかもしれない。

「印象・日の出」が描かれたのは、フランス北西部のノルマンデー地方にある「ル・アーヴル」という港町。

モネはホテルの一室から港をみてこの作品を描いたそうだ。

しかし、第二次世界大戦でル・アーヴルの街は壊滅した。そう、あのノルマンディー上陸作戦から続く場所なのだ。

モネが滞在したホテルは今はないが、その場所にはモネがここで「印象・日の出」を描いたと伝える看板が建っている。

そしてその向かいに「マルロー美術館」がある。
印象派のコレクションではオルセー美術館に次ぐ第二位の量を誇る。

このマルロー美術館は、作家であり当時の文化相であったアンドレ・マルローが設立したフランスで戦後初めての文化施設。

自然光を取り入れた展示が個性的で素晴らしく、ル・アーヴルの海を見ながら作品を鑑賞できる素敵な美術館だ。

このマルロー美術館の学芸員さんの話を聞く機会があったのだが、誰の言葉は失念したが南フランス出身の方の言葉を紹介してくれた。
「南フランスにはどこにも印象的な光はなかった。ル・アーヴルに長年住んで、ル・アーヴルの光をみて、印象派はル・アーヴルでしか生まれなかったと確信した。」

残念なことに、「印象・日の出」はここにはない。パリのマルモッタン美術館にある。

さて、このル・アーヴル。世界遺産に指定されている。

この世界遺産の基準がおもしろい。

ル・アーヴルは、建築家オーギュスト・ペレによって、ほぼまっさらな状態から作られた。建築史としても、都市計画としてもとても特異な街なのだ。

世界遺産は歴史的や文化的価値、たぐいまれな自然に対して認定されることが多い。都市計画でしかも現代建築というのはなかなか珍しい。

しかもオーギュスト・ペレは鉄筋コンクリートに芸術性を見出すことに命を懸けた「コンクリートの父」なのだ。

碁盤の目のように造られた道路、コンクリートでできた建物。

少し違和感を覚える街並みだが、「どこに行くのもわかりやすいのよ」と地元の人は笑って言っていた。

街のシンボルは八角形の塔を持つサン・ジョセフ教会。
これはペレ最後のの作品。中もコンクリートうちっぱなしだ。

無機質なコンクリートに色鮮やかなステンドグラスが印象的。
赤色は人生、オレンジ色は達成感とそれぞれの色にも意味がある。

ここではもう一つ、ペレの造った興味深い建物が見学できる。

1950年代のアパート(マンション)だ。
内部見学できるツアーがある。

柱がアパートを支えているので、部屋の中にも柱がある変わった造り。でも壁を壊せば内装が変えられるという利便性を併せ持つ。
ペレは柱が大好きだったのだそうだ。

全ての部屋にドアがなく、主婦をキッチンに縛り付けないようにと、キッチンと食事スペースが繋がっている。
置かれているのは当時のシステムキッチンで、今までなかったステンレスを使い、換気にも気を配っている。主婦の気持ちを代弁したかのような造りだ。

戦前は85%の家庭にお風呂がなかったそうだが、バスもトイレもついている。

当時を思わせるレトロな家具が置かれていて、それぞれの部屋には今も人が住んでいるようにおしゃれな生活雑貨がおいてある。

ペレはそれまでの概念を取り払う間取りを設計し、モデルルームでそれを知らしめた。

かわいい!今でも住みたい!と思う部屋なのだ。

無機質なコンクリートの建物と再建された街並み、という前情報に、ル・アーブルの街にあまり興味を持てなかった私だったが、否、なかなか魅力的ではないか。

また行きたい、と思っても中々いける場所でもないが、モンサンミッシェルに行く旅が急ぎ足でないなら、ル・アーブルなどノルマンディーの街をめぐりながら行く旅は楽しい。機会があれば別の街も紹介したい。

海to空
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