沖縄本島の南部には鍾乳洞が点在している。
どこも同じと思われるかもしれない。
でもここガンガラーの谷は違うのだ。
何が違うのか?
この鍾乳洞は約2万年前に港川人(みなとかわじん)が住んだ場所なのだ。
日本人の祖先かもしれない港川人が歩いた場所を自分も歩いている。
壮大なロマンを感じずにはいられないはずだ。ガンガラーはそんな場所だ。
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鍾乳洞は琉球石灰岩でできている。
琉球石灰岩が何からできているかご存知だろうか。
そう、サンゴ。
太古の昔は海だったこの地のサンゴが数十万年前に石灰岩となった。
そしてその石灰岩が崩落して大きな穴があいた。
今私たちが歩くガンガラーの谷は鍾乳洞の天井が崩れてできた谷だ。
当初私はガンガラーの谷では秋芳洞のように洞窟内部を見学するものと思っていた。
でも全く違う。
ガンガラーでは熱帯雨林の森を散策するのだ。
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ガンガラーの谷のツアーの受付は鍾乳洞の入り口にあり、そこにはカフェがある。
2013年、このカフェのある場所から土器や狩りの道具が発見された。
その後、カフェの脇の洞窟からは釣り針が見つかった。
この釣り針がすごかった。調べてみたらこれは23、000年前、なんと世界最古の釣り針だった。
港川人の人骨はこのガンガラーから約1km離れたフィッシャー遺跡で発見された。
石の割れ目に落ちたとみられ、骨がきれいに発見されている。
しかしフィッシャー遺跡の場所には生活に関わるものが発掘されなかった。このことから港川人はガンガラーの谷に住んでいたと考えられている。
◇
さぁツアーの出発だ。
ここガンガラーの谷では専属のガイドさんが説明しながら歩いてくれる。
まずは大きな傘のような葉っぱが特徴の「クワズイモ」が迎えてくれる。
「となりのトトロ」でトトロが頭の上に乗せていた大きな葉っぱだ。
この木は里芋の仲間だそうだが、葉っぱや茎に毒性があり、食べると舌がしびれることから「食わず芋(クワズイモ)」と名付けられたそうだ。
その先に鍾乳石「つらら石」が見えてくる。
鍾乳石が鍾乳洞の外にあるということから、ここには元々天井があって、鍾乳洞の中であったことがわかる。
何十万年前も昔の話であるが。
次に、長い根を上から垂らしたガジュマルの木が聳え立つ。
「ガジュマルの木は歩く」と言われている。
垂れ下がった根っこが地面に着くと根を張って肥大化する。
そして、古い根っこは長い年月の中で枯れてなくなる。
そう、新しい根が残り、元の根がなくなるので、まるで木が歩いたように見えるのだ。
沖縄ではガジュマルの木に赤い髪をした樹木の精霊キジムナーが住んでいると言われている。
キジムナーは心のキレイな人にしか見えないそうだ。残念だが見れなかった。
ガンガラーの谷には女性の洞窟イナグ洞と男性の洞窟イキガ洞がある。
イナグ洞の中には入ることができないので洞窟の入り口で良縁や安産への祈りをささげる。
イキガ洞の中には入ることができる。
火を灯したランタンを用意してくれ、炎の暖かさを感じながら中に入る。
イキガ洞では子孫繁栄や子宝に恵まれるようにと祈りをささげる。
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ツアーのハイライトは大主(うふしゅ)ガジュマルの木だ。
樹齢150年というからそれほど前ではないように思ったが、高さがすごい。
長い根を垂らした大主ガジュマルは今も右から左へ歩いている。
その先には人口で作られた「ツリーテラス」がある。
ここから海に向かって1.5kmの場所にあるのが港川人がみつかった港川遺跡。そこを遠望できる。
ツアーの最後に埋葬された人骨が発見された「武芸洞(ぶげいいどう)」を訪ねる。
見つかったのは4000年前の人骨で身長150cmの男性。12個のブレスレットをしていたという。
驚くことに地表からたった15cmのところに埋まっていたのだ。
これはこの武芸洞の環境が数千年変わっていないということを示している。
人類の祖先がどこから日本に来たのか所説あるそうだが、アフリカで人類が誕生し、台湾に渡り(かなり端折っているが)そこから沖縄→本土に渡ったという説もある。
とするともしかしたら、港川人が日本人の祖先かもしれない。
港川人は沖縄で絶滅したという説もあるそうだし、縄文人ではないという説も有力視されている。
謎の解明のためにここガンガラーでは発掘調査を進めている。
将来歴史が解明されたというニュースを聞くことができるかもしれない。
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ガンガラーの谷はガイドさんの案内を聞きながら約1kmを歩く。このガイドさんの説明が素晴らしい。
説明を聞いていると自分も歴史の証人の一人になりたいという気になった。
ガンガラーの谷は那覇空港から南東へ車で約30分の距離にある。
時間があれば是非訪ねてみて欲しい。
ガンガラーの谷公式ホームページ: https://gangala.com/
ツアー料金:一人2,500円