イタリアと言えばカンツォーネ、フランスと言えばシャンソンがあるように、ポルトガルにはファドがある。
ファドはポルトガルの民俗音楽なんて言い方をされるけど、ちょっとピンとこないところがある。
ファドは国を代表する音楽なのだろうけど、もう少し身近な感じがするから。
今日はそんなファドの話。
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ファドを表現するとき、「哀愁」という言葉が使われる。
失恋の悲しさや、死、墓など哲学的なテーマで人生を歌い上げるファドは、ポルトガル語が理解できなくても、むせび泣くような曲が悲しさを誘う。
初めて聞いたときは、なんだか苦しくなるくらい切ない歌だと思った。
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ファドには歌手だけでなく、楽器もつきものだ。
楽器は主に2種類。
まずファドになくてはならないのが、「ポルトガルギター」。
マンドリンのようなちょっと丸みを帯びたフォルムで、力強い音やリュートのような繊細な音も出す12弦のギター。
そして「ギター」 いわゆるクラシックギター。
これに「ベースギター」が加わったり、ギターの代わりにベースギターを使ったりする。
つまり歌手と2人の楽器演奏者が基本のスタイルとなる。
上記の写真は飾り物のポルトガルギター。
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ポルトガルには「ファドの女王」と呼ばれるアマリア・ロドリゲスという歌手がいた。
美しさもさることながら、哀愁たっぷりに歌い上げるその様が素晴らしい。
歌声を聞くだけで胸が締め付けられ、心が揺さぶられる。
”1999年に79歳で死去した際、ポルトガルは3日間の喪に服した。”(Wikipediaより)
というほど、国民に愛された歌手だった。
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ファドはどこで聞くかというと、リスボンの下町エリア。
ファドを聞かせるレストランやバーが何件かある。
観光客向けの店、ファドを聞かせる店色々あるので、きちんと選んででかけたい。
夕食をレストランで食べることもできるし、別の店で食事をしてショーの時間に合わせて行き一杯飲みながらファドを聞くこともできる。
ショーのスタートは遅めで22時頃からだったと記憶している。
コロナで色々変わっているかもしれない。
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ファドの歌手は女性ばかりと思われがちだが、学生の町コインブラには別のファドがあり、ファドの歌い手は男性のみとなる。
リスボンのものとは歌詞もだいぶ違う。
コインブラ大学の学生が恋を歌ったのが始まりで、コインブラのファドは恋の歌が多いのだそうだ。
黒いマントを着て歌うコインブラの男性ファドの特徴。
独特の雰囲気がとてもよかった。
ちなみに上記、左の男性が弾いているのが、ポルトガルギター。
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色々聞くうちに、ファド=暗い歌、と思われがちだけど、実は暗い曲ばかりというわけじゃないことを知った。
元気がでる歌もあるのだ。
アマリア・ロドリゲス亡き後も次世代のファドの歌手が登場し、若者にも人気だ。
その一人がポルトガルでは超有名なファド歌手のアナ・モウラ。
クラシックなファドとはちょっと違う、元気のでる一曲も聞いてみて欲しい。ファドの印象が変わるかも。
女性だけでなく、男性のファド歌手も活躍している。ファドに興味をもたれたら、是非探してほしい。
最後に、ファドはユネスコにより無形文化遺産に登録されている。
衰退や消滅の危機感があるのだろうか。
またポルトガルに行ったら色々聞いてきたい。
今日の話はここまで。それでは、また。