”もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら”
通称「もしドラ」は2009年12月に出版され、映画化、漫画化、アニメ化をされ一世を風靡したベストセラーです。
なぜ先に「マネジメント」を読まずに「もしドラ」を読むのか?
この本のタイトルにでてくる”ドラッカーの「マネジメント 基本と原則」”は世界で一番読まれている経営学の本です。「マネジメント」に書かれていることは役立つ知識が満載なのですが、難解な部分も多く、なかなか一度で全部理解できるようなものではありません。
「もしドラ」は平易な文章で、「マネジメント」を活用するヒントを伝えてくれるのです。
「もしドラ」自体感動的な話なので、青春小説として読んでもよいのですが、その中に人生や事業に大事なヒントも含まれているのです。これは読まないと損しているのではないか、と思う1冊です。
「もしドラ」を要約しながら「マネジメント」の要点をまとめていきます。
・「マネジメント」に何か書いてあるのか簡単に知りたいかた
・「マネジメント」の手法をどう生かしたらよいか分からないかた
・何かにいき詰っているかた
・自分の幸せは何か考えているかた
・何でこの仕事をしているのだろうと悩んでいるかた
「もしドラ」はこんなお話です
高校2年の夏、突然野球部のマネージャーになった川島みなみは、野球部を「甲子園に連れて行く」と決めます。
マネージャー、マネジメントについて本から学ぼうと本屋にいったみなみは、世界で一番読まれた本としてドラッカーの「マネジメント」を紹介してもらいます。
その日から甲子園を目指しマネージャー仲間と「マネジメント」に書かれた理論を読み解きならが、野球部を分析し、改革していきます。
「もしドラ」から学ぶ「マネジメント」の5つのポイント
「もしドラ」の中には「マネジメント」の手法を活用するノウハウがたくさんちりばめられています。
その中で5つのポイントに厳選して、最重要と思う事項をお伝えします。
1.組織の定義付け「野球部とは何か」
まず考えるのは事業の定義づけです。つまり主人公のみなみにとっては「野球部とは何か」を考えます。
ドラッカーは「マネジメント」の中で
「われわれの事業とは何か」との問いは、ほとんどの場合、答えることが難しい問題である。わかりきっと答えがただしいことはほとんどない。
マネジメント23ページ、もしドラ25ページ
と書かれています。それゆえ答えは「野球をやる人たちの集まりです」とか「部活動の一つです」などどいう答えではないはずで、ここでまず大いに悩みます。
2.一番重要な問い「顧客とは誰か」
「野球部とは何か」をみつけられないまま、みなみは次の問い、顧客は誰かを考え始めます。
「顧客は誰か」の問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえで、もっとも重要な問いである。
マネジメント23~23ページ、もしドラ36ページ
やさしい問いではない。まして答えのわかりきった問いではない。しかるに、この問いに対する答えによって、企業が自らをどう定義するかがほぼきまっていくる。
マネジメント24ページ、もしドラ37ページ
ここでも難関な問いの答えを出す必要がでてきます。
みなみはマネージャー仲間とこの問いの答えを考えていきます。
そして「野球部の顧客」は「親であり、高校のある東京都民であり、高野連であり、高校野球ファンであり、野球部員でさえ顧客である」という答えを導き出します。
そこから「野球部とは何か」の答えを「顧客に感動を与えるための組織である」という答えをみつけるのです。
私も今行っている事業について特にこの1の組織の定義づけと2の顧客は誰かについて、みなみが本の中でとった手法を何度も読み返し、自分なりの答えをみつけていきました。
本当に簡単ではありませんでした。
でもこれが一番重要な2つなのです。事業、それは企業でなくても、野球部のような部活動でも成功させたいと思ったら避けてはいけない2つの問いです。
3.真のマーケティングは顧客からスタート
実はこれはみなみは既にできていたので簡単にすすめてしまうのですが、私にとって顧客からスタートするということは自分に何度も言いきかせないといけないポイントでした。
真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち、現実、欲求、価値からスタートする。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。「われわれの製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」と言う。
マネジメント17ページ、もしドラ59ページ
「これを売りたい」「こんなに良いものだから買ってくれに違いない」
こんな考えはだめだということです。
マーケティングの基本の考え方ですが、ともすると忘れがちでつい顧客目線から自分目線になってしまいます。
ジョブ理論にも繋がっていますね。
4.「成長の時」に備えよう
成長には準備が必要である。いつ機会が訪れるかは予測できない。準備しておかなければならない。準備ができていなければ、機会は去り、他所へ行く。
マネジメント262ページ、もしドラ119ページ
「野球部とは何か」「顧客は誰か」をみつけ、マーケティングをスタートさせ、「マネジメント」に書かれたことを実行していくみなみたち。野球部員は意識が変わり行動が変わってきます。
そしてみなみは今が成長の時だと確信し次の一手を打ちます。
一段階段を上るためには準備が必要で、階段を上る機会があっても準備ができていなければ上れない。
一見当たり前のことですが、準備がきちんとできるまでやり続けるということの大切さを感じるところでした。
5.新しい課題「イノベーション」
これまでのやり方では目標の甲子園出場には手が届かないと悟ったみなみは、全く新しいことを始める必要性を感じます。
企業の第二の昨日はイノベーションすなわち新しい満足を生みだすことである。
マネジメント18ページ、もしドラ142ページ
イノベーションの戦略の一歩は、古いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることである。昨日を守るために時間と資源を使わない。昨日を捨ててこそ、資源、特に人材と言う貴重な資源を新しいもののために開放できる。
マネジメント269ページ、もしドラ144ページ
野球部がとったこの「捨てる選択」は納得できるものでした。
でも「捨てる」という選択が企業でできるのだろうかと大いに考えました。捨ててこそ、次の人材に投資できる。なるほどと唸った部分です。
最後に
ストーリーをすべて話してしまうと物語としての楽しみがなくなってしまいますので、ここまでにしておきます。物語の後半とまだまだ使われる「マネジメント」の手法は手に取って読んでみてください。
何かに行き詰っているかたはこの本に解決するヒントがあると思います。
「もしドラ」は読み返してみるたびに気になるところが変わります。今私に必要なところが浮かび上がってくるのです。
「もしドラ」で気になったところは本家の「マネジメント」でも読んでみる、そんな読み方をしています。合わせて読んでみてはいかがでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。